基本的人権の確立
人権と法の支配
❶ 自然権 :人が生まれながらに持つ権利 👉国境も越えた崇高なもの👉2000
❷基本的人権
❸ 「法の支配」
①人権を保障するには権力が法に従って行使されなければならない
②エドワード・コーク…マグナ・カルタ(👉マグナカルタで初めて自然権が主張された)以来のイギリスの3 コモン・ロー の伝統を重視→王も法に従うことを主張→権利章典1869→法の支配の確立
❹民主政治:人権保障を実現するために行われ、4 民主的な決定であっても、個人の人権の不当な5 制限は許されない。
❺6 立憲主義 :政治はあらかじめ定められた憲法の枠内で行われなければならない
❻憲法の最高法規性
8 国家権力の行使は憲法により制限される
❼9 法治主義:法による秩序の維持を重視
👉法律があれば何でもできると誤解されてしまう危険あり。
人権の歴史的展開
❶人権思想の確立:10 市民革命などの成果として、身分的な特権を否定し、誰もが等しく人権をもつという考え方が成立→バージニア権利章典1776、アメリカ独立宣言1776、11 フランス人権宣言1789などにより定着。1776年頃の日本は江戸期の田沼意次の時代である。
❷人権の歴史的展開
❶自由権12→国家からの自由
👉精神的自由・経済的自由・身体(人身)の自由
❷参政権:国民が政治に参加する権利…13 チャートスト運動などをへて確立👉選挙権・被選挙権・国民投票権など
③14→社会権:生活そのものの保障を求める権利…15 資本主義 の進展による貧困や労働環境の悪化→労働運動の高揚→20世紀型権利として確立→「国家による自由」
16 ワイマール憲法(1919年、ドイツ):「人間に価する生活」の保障→所有権の制限、団結の自由などを規定
❶人権の拡充と国家観の変容
◎自由権(18世紀的基本権)と夜警国家
自由権は、財産権など経済的自由をはじめ、個人の自由を国家の干渉から守るための権利であり、「国家からの自由」という性格をもつ。歴史的には、17・18世紀の市民革命を経て確立し、自由放任主義 (レッセ・フェール)に基づく夜警国家(必要最小限の役割を果たす国家)の成立と対応。
◎参政権の要求
参政権は、選挙権・被選挙権(立候補する権利)など国民が政治に参加する権利であり、「国家への自由」という性格をもつ。歴史的には、19世紀前半のイギリスで起こったチャーチスト運動(労働者が普通選挙権を要求)が有名。ただし、普通選挙制が各国で普及するのは20世紀に入ってからである。
◎社会権(20世紀的基本権)と福祉国家
社会権は、すべての人が人間らしい生活を営むことができるように国家に対して積極的な施策を要求する権利であり「国家による自由」という性格をもつ。歴史的には、失業・貧困などが激化した19世紀以降、要請されるようになり、ワイマール憲法ではじめて明文化。こうした動きを背景に、福祉国家(国民生活に積極的に介入する国家)が成立。
◯日本国憲法における社会権:第25条…生存権
第26条…教育を受ける権利
第27条…勤労権 第28条…労働基本権
図表で確認 問1 人権についてまとめた下の年表の空欄にあてはまる適語を入れよう
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英 1 マグナカルタ 👉自然権が主張された |
1832 |
英 第一次選挙法改正 |
1628 |
英 権利請願 |
1838 |
英 チャーチスト運動 |
1642 |
英 2ピューリタン革命 |
1863 |
米 奴隷解放宣言 |
1651 |
英 ホッブス 「リバイアサン」 |
1889 |
日 大日本帝國憲法発布 |
1679 |
英 人身保護法 |
1919 |
独6ワイマール憲法 制定 |
1688 |
英3マグナカルタ |
1945 |
国際連合 |
1689 |
英 権利章典 |
1946 |
日 日本国憲法公布 |
1690 |
英 ロック「統治二論」 |
1948 |
7世界人権宣言採択 |
1748 |
仏 モンテスキュー「法の精神」 |
1951 |
難民の地位に関する条約採択 |
1762 |
仏 ルソー「社会契約論」 |
1965 |
人種差別撤廃条約採択 |
1776 |
仏 ルソー「社会契約論」 |
1966 |
8国際人権規約採択 |
1776 |
米 バージニア権利章典 4アメリカ独立宣言(米) |
1979 |
女子差別撤廃採択 |
1787 |
米 アメリカ合衆国憲法制定 |
1989 |
子ども(児童)権利条約採択 |
1789 |
仏 フランス革命 |
2006 |
障害者の権利条約 |
1789 |
仏5フランス人権宣言 |
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満点の極意 国際人権規約
①世界人権宣言とは異なり、締約国に対する法的拘束力をもつ。
②社会権規約(A規約)、自由権規約(B規約)を柱として、さらに2つの選択議定書を含む。
③日本の対応。A規約は3点を留保した上で批准、B規約はまるごと批准、2つの選択議定書は未批准 詳細は教科書160㌻参照
ちなみに、第二選択議定書は死刑廃止条約である。日本は批准していない。
センター過去問演習
【2000—本試】
人権思想に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人権は,自然権思想を根拠とするものではあるが,国境を越えてまで保障されるわけではない。✖︎👉国境なんてちっぽけなものでない永久不可侵である
② 人権は,現在の国民に対しては保障されるが,将来の国民に対しては保障されない。✖︎すごい意見ですね!
③ 人権は,永久不可侵の権利であるため,それに対していかなる制約を課すことも許されない。○
④ 人権は,人間であることに固有のものであるから,放棄したり任意に譲り渡したりすることは許されない。
👉多少迷うところだが、③が絶対だからスルー
正解→③
【2004年本試05】次の文章中の A ・ B に入る語句の組合せとして最も適当なものを,以下の①~⑥のうちから一つ選べ。
「民主主義とは多数決である」としても,立憲主義国家ではすべてのことを多数決で決定できるわけではなく,とりわけ基本的人権を規制するような決定には慎重でなければならない。
例えば,多くの国民が望んでいることを理由に,刑期を終えた人を引き続き拘留し,同一事件について再起訴することを認める法律を国会で制定したとする。これは同じ犯罪について重ねて刑事上の責任を問わないとする一事不再理の原則や刑期を終えた人の A という人権が侵害されることになろう。
これを防ぐためにも,多数決原理に基づいて制定される法律の内容もまた基本的人権にかなうものでなければならないという意味を含む B という考え方が大切になってくると言える。
① A 生存権 B 法律の留保
② A 生存権 B 法の支配
③ A 免責特権 B 法律の留保
④ A 免責特権 B 法の支配
⑤ A 身体の自由 B 法律の留保
⑥ A 身体の自由 B 法の支配
解答:⑥👉留保はとどめるという意味
【2012ー本試】
人権に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人は生まれながらにして侵すことのできない権利として自然権を有するという考え方が初めて示されたのは,マグナ・カルタにおいてである。○
② 国際連合(国連)成立後,人権を初めて体系的に規定した国際文書である世界人権宣言が採択されている。✖︎世界人権規約だ
③ 日本国憲法は,人権を実効的に保障するために,憲法裁判所の設置を規定している。✖︎憲法裁判所は設置されていない。
④ 人間に値する生活を営む権利を保障する規定を憲法に取り入れるようになった国が登場したのは,19世紀である。✖︎20世紀
正解→①
【2017—本試験】
統治の原則に関する記述として適当でないものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。
① 国王や君主などの権力者は法に従う必要はないとする専断的な政治のあり方は、人の支配と呼ばれる。✖︎
② 選挙における直接選挙の原則とは、有権者がもつ一票の価値は同じであるべきとする考え方のことである。✖︎平等選挙
③ 国家権力を分け、その担い手を分離独立させ、相互に抑制・均衡させることで、権力の濫用を阻止する考え方は、権力分立の原則と呼ばれる。○モンテスキューだね!
④ 国家からの自由とは、国家権力による不当な干渉や侵害を人々が受けないことを保障しようとするものである。○
誤文→②