現社でGO!29 現代日本の雇用問題
➡終身雇用制
新卒者を雇用し、原則として定年まで解雇しないため、従業員の企業への帰属意識が強まる。しかし近年では、中途採用、出向、早期退職勧奨などにより崩れつつある。
➡年功序列型賃金
勤続年数・年齢などに応じて賃金が上昇する。しかし近年では、能力給や年俸制などの導入により崩れつつある。
➡企業別組合
欧米では労働組合は主に産業別に組織されているのに対し(産業別組合)、日本では企業単位で組織されている。組織率は年々低下し、すでに20%を下回っている。ナショナル・センター(全国的な中央組織)として、日本労働組合総連合会(連合)などがある。
➋雇用情勢 ★★
➡労働環境の変化 1980年代以降、外国人労働者の流入、先端技術への中高年労働者の不適応、女子労働者の増加、就業形態の変化(ex.パート、フレックスタイム制、派遣労働)、などにより労働環境は激変した。1990年代に入り バブル景気 が崩壊すると、企業にとってコストがかかる雇用慣行は修正を迫られた。こうした雇用情勢は修正を迫られた。こうした厳しい雇用情勢の下、完全失業率の上昇、有効求人倍率の低下、フリーターの増加(08年170万人)といった状況に加えて、最近では「若年無業者」を意味する ニート (NEET:Not in Employment Education or Training・・・イギリス発祥の用語 08年64万人)の増加が問題となっている。
2003年の労働者派遣法改正(製造業への「派遣」解禁)により、非正規労働者(ex.派遣、アルバイト、パートタイマー)が激増し、全労働者の約30%を占めるまでになっている。正社員との給与等の待遇面での差は大きく格差社会やワーキングプアといった問題が指摘されている。
① 企業間競争激化でリストラ(Restructuring「再構築」)にともなう中高年労働者の失業激増(➡に脚光 導入は…?)。
② 年俸制や職務・能力給を導入する企業の増加。
③ 若年者の労働組合離れで、組織率の低下が深刻化(組織率: %強)。1989年には横断的な「(新)連合」が結成。
満点の極意❶雇用をめぐる法制度のポイント
1男女雇用機会均等法 …募集・採用・定年・退職などでの女性差別禁止
セクシャル・ハラスメントの防止義務
罰金などの罰則規定なし
2育児・介護休業法 …男女いずれにも休業取得が認められる
3障害者雇用促進法 …国・自治体・民間企業に障害者雇用率を定めている
①男女雇用機会均等法のポイントは4つ。
⑴募集・採用・配置・昇進・教育訓練・福利厚生・定年・退職などについての差別を禁
止。
⑵事業主に、セクシャル・ハラスメントの防止義務が課されている。
⑶違反企業の名前は公表できるが、罰金などの罰則規定はない。
⑷直接差別だけでなく、間接差別も禁止している。
② 育児・介護休業法 :男女いずれの労働者でも取得できること、しかし、休業中の
所得保障が不十分なことに注意。
③労働者派遣事業法:改正(1999)により派遣労働の範囲が拡大されたことがポイント。
④高齢者雇用安定法(2004改正):企業は、65歳までの定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかを選択することを義務づけられた。
⑤障害者雇用促進法:国・自治体・民間企業の障害者雇用率を定めていることに注目。
満点の極意❷
間接差別 …身長・体重・体力を募集・採用の条件とする。
…転勤経験があるかどうかを昇進の条件にする・
(2004年度)
男女労働に関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① |
労働基準法は,1歳未満の子どもがいる男女労働者が育児のために一定期間休業することを保障し,その承認を企業に義務づけている。✖︎法律で決まっている。 |
② |
男女共同参画社会基本法は,男女が性別による差別的取扱いを受けることなく,あらゆる分野の活動に対等に参画できる社会形成を目指している。 |
③ |
男女雇用機会均等法は,男女が共に働きやすい職場環境をつくるために,セクシュアル・ハラスメントの防止を企業に義務づけている。 |
④ |
夫婦同姓を定める現行の民法については,一方の配偶者が不利益を被(こうむ)ることもあるとして,選択的夫婦別姓制度を求める動きがある。 |
正解→①
【2001年本試20】女性(女子)差別撤廃条約を受けて日本では男女雇用機会均等法が制定されたほか,様々な法律が整備されてきた。男女の労働にかかわる現行の法律に合致する内容として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 雇用に際して女性・男性を区別して募集することは,原則として許されないが,「男子営業社員」「女性秘書」等,職種が限定されていればよい。
② 介護休業は男性にも女性と同様に認められているが,育児休業は母親が取れない場合にのみ父親が取ることが認められている。
③ 新聞記者,医師など特別の場合を除いて,女性に深夜勤務をさせてはならない。
④ 雇用主は,職場でセクシュアル・ハラスメントが起きないよう配慮しなければならない。
解答:④
【2002年本試07】女性には不向きと考えられがちだった多くの職業で,女性が活躍するようになっているような流れにもかかわらず,現在でも社会には根強い男女差別がある。特に,表面上は男女の差別には見えない制度や慣習が,実質的に差別を生み出したり,男女を差別するために利用されたりしている場合を「間接差別」といい,直接的な差別と並んで是正が求められている。企業による間接差別の例として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① A社では,新卒者向けの求人情報を男子学生だけに郵送し,女子学生からの問い合わせには返信していない。
② B社では,残業や転勤を昇進のための重要な評価基準にしているので,家事や育児の責任を多く負わされやすい女性は昇進しにくくなっている。
③ C社では,最近男性社員に比べて女性社員の人数が増えたので,男子用と同数だった女子用トイレの数を増やした。
④ D社では,事務職の採用選考で,容姿の評価を目的とした面接試験を女性だけに課している。
解答:②
【2002年追試10】育児・介護や家事と仕事との両立に関する次のア~エの記述のうち,正しいものの組合せを,以下の①~⑥のうちから一つ選べ。
ア 女子差別撤廃条約は,男女ともに家庭責任を担えるように社会環境を整備することを締約国に求めているが,日本は,男女そ
れぞれが担ってきた伝統文化や地域の事情に配慮し,これにかかわる条項については留保している。
イ 育児・介護休業法は,乳幼児を養育する親が一定期間仕事を休むことを認めるよう事業主に求めているが,特に父親はこの制
度をほとんど利用しておらず,その活用のための意識の変化や就労環境の整備が今後の課題である。
ウ 国や自治体は,子育てと仕事の両立支援,家庭における子育て支援などの育児支援施策はほぼ完了したものとみなし,近年で
は,社会の急速な高齢化に対処するべく,介護保険法などによる高齢者福祉施策に重点を移した。
エ 近年施行された男女共同参画社会基本法は,男女が互いに人権を尊重しつつ責任を分かち合う社会の実現を目指しており,男
女が共に家庭生活と他の活動とを両立できる社会の形成はその基本理念の一つである。
① アとイ ② アとウ ③ アとエ
④ イとウ ⑤ イとエ ⑥ ウとエ
解答:⑤
【2011年本試30*】現在の日本の雇用状況に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 契約社員や派遣労働者などの非正規雇用労働者は,正規雇用労働者と比べると,身分が不安定である代わりに,平均的に賃金が高い。
② 正規雇用労働者の年間総労働時間は,アメリカとほぼ同水準であるが,ドイツやフランスと比べると短い。
③ 男女雇用機会均等法は,雇用に関する男女差別の解消に関して,禁止規定としてではなく,努力義務として,これを定めている。
④ 被雇用者の加入する雇用保険の保険料は,事業主と被雇用者の双方が負担することとされている。
解答:④
【2010年本試12*】日本の労働市場に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。なお,この設問は,2008年以前の状況に関するものである。
① 男女雇用機会均等法の改正により,募集・採用における男女差別が禁止された結果,現在では,平均賃金の男女格差は解消している。
② 日本の労働組合は,雇用の流動化などの要因によって,その組織率をさらに低下させている。
③ バブル崩壊後の不況によって,就業者数が減少したために,非正規労働者の数は1990年代全体を通じて減少した。
④ 労働者派遣法の改正により,対象業務の範囲が見直され,あらゆる業務に対して労働者派遣を行うことが可能になった。
解答:②
【2009年追試13】労働者を取り巻く環境に関する日本の法律の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 育児・介護休業法によれば,1歳以上から就学前までの子を養育するため,また介護のため,男女どちらでも休業することができる。
② 男女雇用機会均等法は,募集・採用における女性差別の解消について規定を設けたが,制定当初は企業に対して努力義務を定めるにとどまった。
③ 障害者雇用促進法は,具体的促進策を備えていないものの,民間企業に対して障害者を一定比率以上で雇用することを求めている。
④ 労働者派遣事業法は,業務の効率化のために人材派遣の活用を望む企業の声もあり,制定以降一貫して規制強化の方向で改正されてきた。
解答:②
問8 日本における女性をめぐる制度や状況に関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 女子(女性)差別撤廃条約を批准するにあたり,パートタイム労働法が制定されている。
② 男女共同参画社会基本法では,性別による固定的な役割分担を反映した制度等が個人の社会活動における選択に及ぼす影響を
改善するよう配慮することが求められている。
③ 現在,女性の労働力率を年齢別でみると,20歳代や40歳代の女性の労働力率と比べて,30歳代の女性の労働力率が低いの
は,出産や育児を理由に退職する人が多いためであると言われている。
④ 現在,日本の国会議員数に占める女性議員数の割合は,スウェーデンの国会議員数に占める女性議員数の割合を下回っている。
正解→