江戸期の思想③-民衆思想
石田梅岩=『都鄙問答』
商人の立場を擁護するため、儒教・仏教・神道に商人道を融合させた石門心学を説いた。心学とは、人としての心を知り、心を極めることです。
正直な人だ!「商人が利益を得るのは武士が俸禄をもらうのと同じ」と言い切った。
生産活動をしないため、表面上、商人蔑視の風潮が強かったこの時代に、梅岩の考えは彼らの自信を深めることになった。士農工商という身分制度は単なる職業の違いに過ぎない。彼の商人道の理念として正直と倹約がある。正直とは、正しい仕方で利益を得、自分も他人もともに立てるようにすることで、倹約とは、ものの効用を最大限に発揮させるように、世の中のために用いることである。
キーワードは心学、そして正直と倹約。
実践過去問 82-20 頻出石田梅岩
安藤昌益=『自然真営道』
安藤昌益は農民の立場を擁護した。彼が理想とする社会は、万人が農業に従事する自給自足の万人直耕の社会であり、自然世と呼んだ。ところが現実の世界(法世)はどうだろう!身分制度を理由にして、労働せずに他人の作ったものにたかる者(不耕貧食之徒)がいる。武士のことだ。昌益は幕藩体制を批判して、農民の立場を擁護した。
実践過去問83-26
二宮尊徳=報徳仕法
尊徳も農民を擁護したが、幕藩体制を否定しなかった点で安藤昌益とは異なる。二宮金次郎と言った方が、馴染みがあるかもしれない。薪を背負って本を読んだ人だ。昔の小学校にはたいていこの銅像があった。
彼は世の中の現象・事象を天道と人道に分ける。天道は自然の働きで人道は勤労のことだ。彼は農民にとって大切なことは、幕府を批判することではなく、自然の営みである天道とどう向き合うかということであり、自然の営みに報いる必要がある。
尊徳は言う。「自分が現在このようにして存在するのは、天地や君、親などの大きな徳のおかげであり、その恩に徳をもって報いなければならない」だから尊徳の思想は報徳仕法と呼ばれる。