43 元禄文化
●17C半~18C初の文化…元禄文化
元禄文化は、5代将軍綱吉のころの文化で、上方(京都・大坂)を中心に栄える文化だ。元気はつらつ明るい文化だ。現世は浮き世として肯定。
1 儒学の隆盛
(1)朱子学:大義名分論(上下の秩序だね!)君臣の別・上下の秩序を重視
朱子学が主流になった理由:大義名分論(君臣の別・上下の秩序を重視する)を唱えたから、身分制社会である幕藩体制を支える倫理思想として、徳川家康以下の幕府によって、自己の支配を正当化するための思想として採用されたのだ!ご都合主義だね!
京学 創始者➡藤原惺窩
ⓐ藤原惺窩:相国寺の僧 家康に招かれるが辞退し林羅山を推薦
ⓑ林羅山:家康に仕える。林家の祖。封建的秩序を正当化する学問として近世朱子学を大成。『本朝通鑑』(漢文の日本通史)を書いた。
ⓒ林信篤:綱吉が大学頭に任命。綱吉が湯島に聖堂を作りこれを任せる。ここに付属の聖堂学問所を作った
ⓓ木下順庵:加賀藩主前田綱紀に仕える
ⓔ新井白石:順庵の弟子で正徳の治を推進 著作も大切! ➡日本史の入試で最も頻度の高い人物と言えば、新井白石だ。
史論 |
『読史余論』幕府の正統性を説く |
古代史研究法 |
『古史通』 |
自叙伝 |
『折りたく柴の記』 |
西洋研究 |
『西洋紀聞』『采覧異言』 |
※順庵の弟子あと二人
ⓕ室鳩巣:吉宗の侍講
『六諭衍義』清朝の初め編纂された皇帝の道徳に関する勅令の集成。やさしく和訓にして広めさせた。父母に孝順、長上を尊敬、郷里に和睦、子孫を教訓
ⓖ雨森芳洲:対馬藩に仕え、日朝外交の実務を担当
南学 戦国時代、南村梅軒が土佐の吉良氏に招かれて始まった。
ⓐ山崎闇斎:会津藩主保科正之に仕え、垂加神道(神道+儒教)創始
(2)陽明学…知行合一(理論よりも実践を重視)明の王陽明創始、朱子学は空理空論じゃ!
ⓐ中江藤樹:近江聖人と呼ばれた、日本陽明学の祖『翁問答』
ⓑ熊沢蕃山:岡山藩主池田光政に仕えた『大学或問』で武士の帰農などを説き、幕政批判の罪で下総古河に幽閉された。
☈陽明学
陽明学はおおざっぱにいえば「動機オーライ主義」
とも言うべきエートスの問題、「結果オーライ」の
対義語で、「はじめよければあとはどうなってもよ
い」、純粋でピュアな気持ちで考えて「今の世の中
は間違っている!こっちが正しい!」と心の芯から
感じいったのであれば、あとは既存の法令や社会の
通念はおろか、自分の行為がもたらす帰結について
も一切考慮することなく突っ走ってよい、結果は必
ずついてくるはずだ、いやついてこなくてもそれは
この俺様の魂の叫びに反応しない周囲の不純な連中
が悪いのであって、俺のせいではないのだからかま
やしない、というような発想のことです。長い人
生、誰でも一度や二度は、そ
んな気持ちになった経験があるのではないでしょうか。まあ、パンクロ
ック系の「De-stro-y!!!」みたいな話でしょう!
(3)古学派…孔子・孟子の原典へ回帰せよ 正しいのは誰だの世界!
聖学
ⓐ山鹿素行:『聖教要録』で朱子学批判し、赤穂に配流された。
☈寛文異学の禁
儒学において思想統制が行われた。「道」とは日常生活の行為における
「条理」(筋目)のことであり、日常生活を明らかにすることを説くも
のであった。この実学傾向が保科正之らの幕府要人の忌み嫌うところと
なり(朱子学批判)赤穂に配流された。
古義学
ⓑ伊藤仁斎・東涯:京都の堀川に私塾古義堂を開き、武士・町人を育
てた。 個人的修養道徳を重視し哲学的立場だ!
古文辞学
①古典文献の研究法を確立、これで聖人の道を求めた。
②政治を重視(ここか古義学との違いで、政治と道徳を分けて考え
た。ここから経世論=経世済民の思想が生まれた。
ⓐ荻生徂徠:江戸に蘐園塾を開いた。吉宗の侍講に(鳩巣とペアで覚
える)著作『政談』は、吉宗に献上した意見書だ。
ⓑ太宰春台:徂徠の弟子で徂徠の経世論を継承した。著作『経済録』
2 諸学問
蘭学以前:中国の自然科学の影響下で独自の研究があった。
(1)本草学
ⓐ貝原益軒:『 大和本草 』
ⓑ稲村若水:『 庶物類纂 』
(2)和算
ⓐ吉田光由:『 塵劫記 』
ⓑ関孝和:『 発微算法 』和算の大成者※日本の数学=和算
(3)蘭学の発展:オランダからの西洋の学➡洋学へ
鎖国下の西洋知識 ➾如見と白石はペアで覚える。
ⓐ西川如見:『華夷通商考』
ⓑ新井白石:『采覧異言』『西洋紀聞』
白石の著書は➡イタリア人宣教師シドッチの尋問書
蘭学発達の契機は、享保の改革での➡漢訳洋書輸入の禁の緩和は大切。
(4)歴史
元禄期:水戸藩徳川光圀、彰考館を設立
※江戸初期 貞門派…松永貞徳(京都)近世俳諧の基礎 滑稽を中
→ 談林派 …西山宗因(大坂)より自由・奇抜な趣向ex.矢数俳諧(数と早さを競う) 蕉風 俳諧…さび・しおり・細み 繊細な感覚と言外の余韻を重視
松尾芭蕉…伊賀の武士 新興商人・豪農とのつながり
紀行:『野ざらし紀行』(名古屋など)『奥の細道』(東北北陸)
句集:『猿蓑』
小説 ※江戸初期:仮名草子…仮名を多く 宗教色が濃い
浮世草子…"浮き世"の世相・風俗(ex.遊里) 現実・人間本能を直視
➥井原西鶴…大坂の商人 談林派の俳人 出版業の隆盛とのつながり
好色物 『好色一代男』(浮世草子の創始)、『好色一代女』、『好色五人女』
町人物 『日本永代蔵』(越後屋など成功談)、『世間胸算用』(大晦日の悲喜劇)
武家物 『武道伝来記』(敵討)、『武家義理物語』 その他多数
☈井原西鶴の小説を浮世草子と呼ぶ。上方町人の世界を描き、人間の本能を肯定したので、上方の町人に大受けした。近松門左衛門と西鶴とのひっかけ問題が頻出。
『日本文化史の整理と演習』神原一郎 著 河合出版
演劇 人形浄瑠璃…物語・三味線・操り人形の三者一体
☈浄瑠璃はもともと平曲(琵琶法師が語る例のヤツ)と同じように、「悲しい悲しい浄瑠璃姫の物語」などを語る「語り物」なのだ。…浄瑠璃節+三味線+操り人形が結びついて、新しい芸能としてスタート。
『日本文化史の整理と演習』神原一郎 著 河合出版
3人の天才が現れて全盛期を迎える。
近松門左衛門(脚本)…京都の武士(牢人) 封建制下の義理と人情の葛
時代物 『国性爺合戦』
(明の遺臣の子 鄭成功=の活躍をテーマにしていることも大事)
世話物 『曽根崎心中』、『心中天網島』
竹本義太夫…大坂出身 語り 義太夫節を創始
辰松八郎兵衛…人形操りの名手 …は発展レベ
歌舞伎:※江戸初期…女歌舞伎(遊女)若いアイドル系の歌舞伎→若衆歌舞伎(美少年)ジャニーズ系の歌舞伎➥風俗が乱れると幕府は禁止→野郎歌舞伎…成人男性が演じる 内容・演技を重視
☈常設芝居小屋が生まれ、演技本位に(当然だよ、野郎でだけじゃね。レベルの高い演技力なきゃ)。近松脚本で大当たり。その上すごい役者が出てきたのだ。二人の得意技と江戸・大坂の区別勝負
主な役者市川団十郎(江戸)…荒事(武人など勇猛さを強調)チャンバラ
坂田藤十郎(上方)…和事(色男の優美さ)恋愛物系。「アホの坂田でわかりやすい」 芳沢あやめ(上方)…女形(おやま)
●元禄美術
建築 東大寺大仏殿(1709)←松永久秀の兵火で焼失1567 善光寺本堂1707など
彫刻 円空…臨済僧 各地を遍歴 ( 円空仏)12万体
絵画 ⓐ御用絵師
住吉派…土佐派から分派住吉如慶創始、子 (幕府御用絵師『洛中洛外図巻』)が発展
ⓑ民間で ex.尾形光琳…京の商人 俵屋宗達の影響→装飾画の大成
『紅白梅図屏風』、『燕子花図屏風』
一蝶(狩野派を破門) 岩佐又兵衛(大和絵新派:浮世絵の源流)
ⓒ浮世絵の誕生…町人社会に題材 肉筆画→木版に(安価・大量) …『見返り美人図』(肉筆)
浮世絵版画を創始
➥菱川師宣版画浮世絵の祖 宣の字に注意
鳥居清信…鳥居派の始祖 役者絵
工芸
➡尾形光琳…本阿弥光悦を継承 『八橋蒔絵硯箱』(伊勢物語に題材)
➡野々村仁清…京の陶工 京で色絵→京焼の祖
ex.『色絵月梅文茶壺』『 色絵藤花文茶壺 』『色絵雉香炉』
染色 宮崎友禅…京の絵師 光琳の画風で下絵→友禅染を創始
※当時の風俗
町人:元禄小袖・振袖の流行…元禄模様 農民:筒袖・股引 土蔵造・瓦屋根の普及