❶イギリス
◎立憲君主制…国王は対外的に国を代表する元首だが、実質的な統治権限をもたない。
◎議院内閣制…内閣は、議会に対して連帯責任を負い、議会(とくに下院)の信任を失えば総辞職するか、下院を解散して国民に信を問う。(上院を解散はできない★2017)
◎不文憲法…成文の憲法典はなく、マグナカルタ(1215)、権利章典(1689)などの歴史的文書や判例法などが全体として憲法の役割を果たしている。
◎議会(二院制)
上院 (貴族院) |
議員は貴族・僧侶で、非民選。議員に任期はなく、身分は終身だが、最近の制度改革で議席数は大幅に減少。 |
下院 (庶民院) |
議員は小選挙区で選出され、任期5年。20世紀初めに下院優遇の原則が確立。➡️内閣不信任決議権をもつ。 |
◎内閣…首相は、下院第一党(下院で最も多くの議席を有する政党)の党首が国王によって任命される。閣僚は、国会議員の中から首相が選ぶ(全員が国会議員)。なお、野党は政権交代に備えて影の内閣(シャドー・キャビネット)を組織することになっている(慣行上成立した仕組み)。
◎裁判所…従来、最高司法機関(最高法院)は上院に置かれていたが、近年の制度改革により、上院の司法機能は新たに設置された最高裁判所に移された(2009)。
◎政党…労働党と保守党の二大政党制
❷アメリカ ★★
◎大統領制…モンテスキューが説いた厳格な三権分立に基づいている。★センター出題
◎憲法…1787年制定。当初は人権保障の条項はなく、修正を重ねて追加された。
◎大統領…国の元首であり、軍の最高司令官。➡️間接選挙で選出され、任期4年。ただし、3選は禁止(2期8年務めたら、3期目は立候補できない)
◎議会(二院制)
①上院…議会は各州から2名ずつ選出され、任期6年。大統領による条約締結と高級官吏任命に対する同意権をもつ。下院の訴追を受けて、➡️大統領の弾劾裁判を行う。
②下院…議員は各州から人口に応じ小選挙区制で選出され、任期2年。イギリスの下院や日本の衆議院と異なり解散はない。➡予算の先議権をもつ。
◎裁判所…判例上、違憲立法審査権(法令審査権)をもつ(憲法には具体的な規定はない)。
◎政党…民主党と共和党の二大政党制。
❸中華人民共和国 ★★
◎民主集中制(権力集中制)…憲法上の最高国家機関である➡️全国人民代表大会(全人代)にすべての権力を集中させ、内閣にあたる👉➡️国務院と、最高裁判所にあたる➡️最高人民法院は全人代に対して責任を負う。
◎国家主席…国家元首で、全国人民代表大会により選出される。
◎政党…建前上、いくつかの党派の存在を認めているが、実質的には中国共産党の一党独裁である。
❹大統領と内閣が存在する国 ★
◎フランス
…大統領は、首相・大臣の任免権や下院の解散権など強大な権限をもっており、➡実質的な大統領制に分類される。
◎ドイツとイタリア
…大統領は儀礼的・象徴的な存在にすぎず、内閣が行政権限をもつため、実質的には➡議院内閣制に分類される。
❺開発独裁
アジアや中南米の発展途上国では、少数の政治エリートや軍部からなる政権の一党独裁の下で、国民の政治的自由を制限しつつ、外国資本の導入などによって経済成長を最優先しようとする強権的・権威主義的な政治体制が成立したところもあった。このような体制を➡開発独裁という。この体制は、急速な経済成長をもたらすこともあるが、その一方で国民の貧富の格差を拡大するなどの結果を招き、民主化運動を誘発する場合も多い。たとえば、韓国では朴正煕政権、フィリピンではマルコス政権、台湾では蔣経国政権の時期に開発独裁が成立していたが、1980年代以降、民主化運動の高まりによって崩壊した。
センター試験の極意1
極意❶アメリカ大統領と議院内閣制の違いに注意
1 大統領がもたない権限
➡法案提出権・議会解散権(⇄内閣はもつ)
2 内閣がもたない権限
➡️法案に対する拒否権(⇄大統領はもつ)
大統領あるいは内閣と、議会との関係を中心に押さえるのがポイント。
①大統領は➡️議会に対して責任を負わない(内閣は➡️連帯責任を負う)。
②大統領は➡️法案の提出権をもたない(内閣は➡法案提出権をもつ)。
ただし、大統領は議会に教書を送って立法の要請・勧告を行うことはできる。
③ 大統領は議会を通過した法案に対し➡拒否権をもつ(内閣には➡拒否権はない)。ただし、拒否権を行使された法案は、上院・下院が3分の2以上の多数で再可決すれば法律として発効する。
④ 大統領は議会の解散権をもたない(内閣には下院、日本でいえば衆議院の解散権がある)。これに対し、議会には大統領に対する➡不信任決議権がない(⇄イギリスの下院、日本の衆議院には➡️内閣不信任決議権がある)
センター試験の極意2
極意❷各国の政治制度はポイントだけ押さえる
1 イギリス…成文憲法典がない
2 フランス…大統領の方が首相よりも権限が強い(ドイツ、イタリアは逆)
3 中国…国会にあたるのは全国人民代表大会、内閣に当たるのは国務院
①イギリス
日本と同じく議院内閣制を採用しているが、政治制度全体をみると少し違う。何といっても、イギリスには「日本国憲法」に相当する成文の憲法典がない。また、イギリスの首相は国会による指名という手続きを経ないで国王によって任命され、上院(貴族院)議員は選挙によって選出されるのではなく、貴族の身分をもつ者が国王によって任命される。
②フランス、ドイツ、イタリア
大統領の地位と首相の地位が両方ともあるから、どちらの権限が強いかということに注目する。フランスは大統領の権限の方が強く、ドイツ・イタリアの場合、大統領は儀礼的な存在にすぎない。
③社会主義の政治制度
中国だけ知っていれば大丈夫だ。ポイントは2つ。➡全国人民代表大会が国家の最高権力機関であること、➡国務院が最高行政機関であること。
センター過去問演習
【2012年本試20】アメリカの政治制度に関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 連邦議会の下院議員の定数は,各州の人口に比例して配分される。○
② 連邦議会は,不信任決議によって大統領を罷免する権限をもつ。✖︎議会に大統領を罷免する権限はない
③ 大統領は,連邦議会が可決した法案に対して拒否権をもつ。✖︎議会の法案に対し拒否権あり。大統領は強い
④ 大統領の任期は4年であり,3選は禁止されている。✖︎2期まで可能だ!
解答:②
【2012年本試14*】間接民主制に関して,各国の政治制度についての記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① イギリスでは,貴族などで構成される貴族院の議員の一部は,選挙によって選出される。✖︎貴族院の選出は選挙ではない
② 中国では,国家権力の最高機関は,一院制の議会として設置される全国人民代表大会である。⭕️
③ フランスでは,国民の直接選挙によって選出される大統領が,首相を任命する。⭕️フランスは大統領の権限が強い
④ 日本では,国会が議決によって内閣総理大臣を指名し,内閣総理大臣が国務大臣を任命して内閣を組織する。⭕️
解答:①
【2008年追試09】アメリカ大統領と連邦議会との関係に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 大統領が法案に拒否権を行使した場合,大統領の判断は尊重されなければならず,連邦議会には当該法案を再可決する方策が認められていない。
再度あり❌
② 連邦議会で可決された法案が,公益を著しく侵害すると大統領が判断した場合,大統領は連邦議会を解散することができる。大統領に議会解散権はない❌
③ 大統領には法案提出権が認められておらず,連邦議会に教書を送付することによって,自らの意向を表明する。⭕️
④ 連邦議会は,大統領に対する不信任決議権を有するものの,これまで連邦議会がその権限を行使したことはない。
連邦議会に大統領の不信任決議権はない❌
解答:③
【2004年本試07*】日本とイギリスとの統治制度の違いを比較した次の記述A~Dのうち適当なものを二つ選び,その組合せとして最も適当なものを,以下の①~⑥のうちから一つ選べ。
A 日本では,首相が国会議員の中から国会の議決で指名されるが,イギリスでは,首相が国民の直接選挙で選ばれる首相公選制を採用している。❌
B 日本は「日本国憲法」という成文の憲法典を持つが,イギリスは「連合王国憲法」というような国としての成文の憲法典を持たない。⭕️
C 日本では,通常裁判所が違憲立法審査権を行使するが,イギリスでは,通常裁判所とは別個に設けられた憲法裁判所が違憲立法審査権を行使する。❌
D 日本の参議院は,選挙により一般国民の中から議員が選ばれるが,イギリスの上院は,貴族身分を有する者により構成されている。⭕️
① AとB ② AとC ③ AとD
④ BとC ⑤ BとD ⑥ CとD
解答:⑤
【2017—本試験】
外国の政治制度に関する記述として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。
① イギリスの議院内閣制では、首相に上院の解散権がある。下院だから❌
② アメリカの大統領制では、議会に大統領の不信任決議権がある。❌
③ イギリスの議院内閣制では、首相は議会に議席をもたない。❌
④ アメリカの大統領制では、大統領は議会に議席をもたない。⭕️
正解→④大統領選挙で選ばれる。