6 基本的人権の保障② ★
〜自由権〜
❶精神の自由 ★★
◎思想・良心の自由(憲法第19条)
内面的な精神活動にとどまる限り絶対的に保障される。「公共の福祉」によっても制限されない。
⚫◾️三菱樹脂訴訟
企業が、学生運動歴を隠して就職した原告の本採用を拒否した事件。最高裁判所(最高裁)は、第19条は私人間には直接適用されないとし、企業による採用の自由を広く認めた(1973)。
◎信教の自由(同第29条)
明治憲法下では神社神道が事実上、国教の扱いを受けた。第20条は、国の宗教活動の禁止をうたっており、第89条(宗教団体への公金支出の禁止)とともに政教分離の原則を構成している。
津地鎮祭 訴訟 |
三重県津市が体育館の起工に際し、公費で地鎮祭(神道の儀式)を行ったことについて、地鎮祭は単なる習俗として合憲(最高裁、1977) |
愛媛玉串料訴訟 |
愛媛県が靖国神社に玉串料の名目で公金を支出したことは、政教分離の原則に反し違憲(最高裁、1997) |
空知太神社 訴訟 |
北海道砂川市が空知太神社の敷地として市有地を無償提供していたのは、政教分離原則に反して違憲と判断(最高裁、2010) |
◎表現の自由(同第21条)
集会・結社・言論・出版などの自由と、検閲の禁止、通信の秘密が規定されている。第21条をめぐる訴訟では、最高裁はすべて合憲判決を出している。
チャタレー事件 |
わいせつ文書の販売規制は合憲(最高裁、1957) |
東京都公安条例事件 |
デモ行進の許可制は合憲(最高裁、1960) |
家永教科書訴訟 |
教科書検定は検閲にあたらず合憲(最高裁、1993) |
◎学問の自由(同第23条)
研究活動の自由、研究成果発表の自由、教授(講義)の自由からなり、大学の自治も含まれると解釈されている。
❷人身の自由 ★★
◎奴隷的拘束および苦役からの自由(同第18条)
犯罪による処罰の場合を除き、意に反する苦役を強制されることはない。
◎法定手続の保障(同第31条)
法律の定める手続きによらなければ刑罰を科されない。近代刑法上の基本原則である
➡罪刑法定主義を確認したもの。罪刑法定主義とは、ある行為を処罰するためには、その行為を犯罪とし、刑罰を科すことを定めた法律が先になければならないという原則。
◎令状主義(同第33・35条)
現行犯逮捕の場合を除いて、逮捕・捜索・押収などに際して➡司法官憲(裁判官)が発する令状を必要とする。
◎被疑者および刑事被告人の権利(同第36〜39条)
拷問の禁止 |
戦前には、自白を引き出すために拷問が行われた。 |
残虐な刑罰の禁止 |
死刑は残虐な刑罰にあたらない(最高裁判決)。 |
裁判 |
公平・迅速・公開の裁判を受ける権利がある。 |
弁護人依頼権 |
刑事被告人が自費で依頼できない場合、国が公費で弁護人を付す(国選弁護人)。近年の法改正により、一部の被疑者にも国選弁護人が付されることになった。 |
黙秘権 |
自己に不利益な供述を強要されない。 |
自白の証拠能力 |
自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には有罪とされず、刑罰は科されない。 |
遡求処罰の禁止 一事不再理 二重処罰の禁止 |
実行のときに適法であった行為は、後にできた法律によって処罰されない(遡求処罰の禁止)。確定判決によって無罪とされた行為は、再審理できない(一事不再理)。同一の犯罪について重ねて刑事責任を問われない(二重処罰の禁止)。 |
❸経済の自由 ★
◎居住・移転および職業選択の自由(同第22条)
「公共の福祉」に反しないかぎり、居住・移転の自由、職業選択の自由(営業の自由も含まれる)が保障される。外国移住・国籍離脱の自由も保障。
⚫薬局距離制限規定違憲判決
薬局開設に際して既存の薬局からの距離制限を定める薬事法の規定は、職業選択の自由に反し違憲(最高裁、1975)。
◎財産権の保障(同第29条)
財産権は、「公共の福祉」によって、政策的に制約されることもある。
⚫共有林分割制限規定違憲判決
共有林の分割請求に制限を儲けている
センター試験の極意1
1 検閲の禁止…検閲とは、公権力が書物の出版などに先立ち内容を審査すること
👉家永教科書訴訟では、文部省が行う教科書検定が検閲に当たるかどうかが争われた(最高裁は検閲に当たらないという判決を出した)。
2 通信の秘密…プライバシー保護との関連でも重要
2 絶対的に保障される人権…思想・良心の自由、信教の自由など内心の自由
センター試験の極意2
1 令状主義の例外…現行犯の場合
2 国選弁護人制度…原則として刑事被告人が対象
【2005年本試08*】社会権的基本権に関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 日本国憲法は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障し,国は社会福祉,社会保障,公衆衛生の向上及び増進に努めるべきだとしている。⭕️
② 工業社会の到来に伴い,大きな富を手に入れた市民による大規模な経済活動を振興・促進するために,国家は,財産権の保護を目的とする制度を整えた。そうした制度はない✖︎
③ 資本主義経済が発展するにつれて,それまでは体系的,本格的に取り組まれなかった社会的・経済的弱者の生活環境整備,教育,雇用,医療などが,公的な政策課題として浮かび上がってきた。⭕️
④ ドイツのワイマール憲法は,経済への国家の介入とともに,労働基本権や生存権を明記しており,日本国憲法など現代の憲法に対して大きな影響を与えた。⭕️
解答:②易しい
【2012年本試35*】日本における表現の自由に関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 表現の自由の保障は,自由なコミュニケーションを可能にすると同時に,民主主義の実現にも必要だとされている。⭕️
② 憲法上の表現の自由は,新しい人権の一つである「知る権利」を主張する際の根拠の一つだとされている。⭕️
③ マスメディアが取得した個人情報であっても,その取扱いは個人情報保護法によって制限されることがある。⭕️
④ 政府がマスメディアを通じて意見を広く表明することは,アクセス権の行使として位置づけられる。
解答:④
【2010年本試14】日本の教育基本法に規定された,国及び地方公共団体の責務についての記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 義務教育の機会を保障すること。
② 能力があるにもかかわらず,経済的理由によって修学が困難な者に対して,奨学の措置を講ずること。
③ 幼児期の教育を無償で実施すること。
④ 障がいのある者が,その障がいの状態に応じ,十分な教育を受けられるよう,教育上必要な支援を講ずること。
解答:③
【2009年本試04】人権に関して,日本の状況の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 憲法には生存権が明記されており,最高裁判所は,これを直接の根拠として,国民は国に社会保障給付を請求することができるとした。生存権は明記されていない✖︎
② 名誉を毀損する行為の禁止が,表現の自由に対する制約として認められるように,人権であっても,他者を害する場合等には制約されることがある。⭕️
③ 最高裁判所は,裁判所による雑誌の発売前の差止めが,憲法で明示的に禁止されている検閲に該当すると判断した。✖︎
④ 在外投票は外国に居住している国民の選挙権を保障するための手段であるが,日本の国政選挙で実施されたことはなく,制度導入が求められている。✖︎
解答:②
【2008年追試36】国民の政治参加に欠かすことのできない権利に関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 表現の自由には,民主政治を発展させる機能があるとされる。⭕️
② 知る権利は,国民主権に資する権利であり,日本では情報公開法に明記されている。知る権利は自由権的な側面と請求権的な側面を有するもので国民主権に資するものではない✖︎
③ 請願権には,参政権を補完する機能があるとされる。⭕️
④ 公務員の選定・罷免権は,国民固有の権利であり,日本国憲法に明記されている。⭕️
解答:②